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2026.08.28 吉井 勇|中堅企業における人的資本経営の実践

人事制度より先に整えるもの ― 役割が曖昧では人は育たない ―

みなさんこんにちは、安田です。

トライアングル・トラスト専門家 社会保険労務士、ISO30414リードコンサルタント/アセッサー 吉井先生ブログ

第2回の掲載となります。よろしくお願いいたします。

テーマは「人事制度より先に整えるもの ― 役割が曖昧では人は育たない ―」です。

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前回、私は人的資本経営を、**「人事担当者が経営と同じ視点で組織の未来を考え、人と組織が前に進める状態をつくるための『拠り所』」**と表現しました。

 

では、「人と組織が前に進める状態」とは、どのような状態なのでしょうか。

 

私は、一人ひとりが「自分は何を期待されているのか」を理解し、それを自分事として引き受け、自ら考え、判断し、行動できる状態だと考えています。そして、その行動が会社の目指す方向につながっている。そこではじめて、人の成長が組織の成長へとつながっていきます。

しかし、会社員時代の私は、そこまで明確に捉えられていたわけではありません。人的資本経営の考え方に出会い、人事の取り組みを可視化し、経営につなげようと試みましたが、その重要性を組織全体へ十分に浸透させるまでには至らず、悔しさが残りました。

 

独立後、その原因を振り返る中で見えてきたのが、制度や施策以前に、「会社がどこへ向かうのか」と「一人ひとりが何を期待されているのか」が、十分につながっていなかったのではないかということです。

そして、その二つをつなぐものが「役割」だと考えるようになりました。

 

会社には社長、部長、課長、担当者といった肩書があり、職務分掌には担当業務が書かれています。しかし、「何をするのか」と、「何のために、どのような価値を生み出すのか」は同じではありません。

私が考える「役割」とは、単なる業務の一覧ではありません。

**「その人が、どの立場で、どれくらいの成果を生み出し、お客様・会社・本部・部門といった相手から『選ばれる』ために、どのような独自の価値を生み出すのか」**を明らかにするものです。

そして「責任」とは、与えられた仕事をただこなすことではありません。

**「その役割を自分のものとして引き取り、相手への共感を大切にしながら、自ら判断し、期待される成果に向けて行動すること」**だと考えています。

つまり、**役割は「何を実現するために自分がここにいるのか」を示し、責任は「その役割を自分事として引き受けること」**です。

役割が曖昧なまま、「もっと責任を持ってほしい」と求めても、人は何を引き取ればよいのか分かりません。

役割が見えるから、責任を引き取れる。責任を引き取るから、自分で考え、判断し、行動できる。そして、その行動から新たな価値が生まれ、その価値が人と組織をさらに前へ進めていく。

私は今、この「価値の循環」を生み出すことこそ、人事という部門が組織にもたらす大きな価値だと考えています。

 

人事は、制度をつくったり、運用したりするだけの部門ではありません。例えば、これまで当たり前に続けてきた業務を見直し、やめるべき仕事はやめ、仕組み化や効率化によって**「時間」という成果を生み出す**。そして、生み出した時間を、社員の育成や対話、相談といった「人に向き合う仕事」へ振り向けていく。

そうすることで、一人ひとりが自分の役割を理解し、持っている力をより発揮できるようになる。これは、人事にとって大切なお客様である**「社員に成長という価値をもたらすこと」**だと考えています。

 

さらに、社員一人ひとりが役割を自分事として引き取り、自ら考え、行動し、新たな価値を生み出す。その積み重ねによって、社員と会社がともに成長し続ける仕組みをつくることができれば、今度は**「会社に長期利益という価値をもたらすこと」**につながります。

時間を生み出し、その時間を人に使う。人が育つことで新たな価値が生まれ、その価値が会社を成長させる。

私は、この循環をつくり続けることが人事の役割であり、前回お伝えした**「人と組織が前に進める状態」**なのだと考えています。この状態へ到達する出発点として、自社でこんな問いをかけてみてはいかがでしょうか。

 

「あなたは、誰に、どのような価値を届けるために、ここにいるのでしょうか」

 

この問いから、「役割」を考えることを始められると思います。

では、その役割をどこまで果たせたのかを、上司と本人はどのように確認し、次の成長につなげていけばよいのでしょうか。

 

次回は、評価制度を「点数を付ける仕組み」としてではなく、**「役割という箱を通じた成長の対話」**として考えてみたいと思います。

 

 

社会保険労務士、ISO30414リードコンサルタント/アセッサー

吉井 勇

 

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