2026.10.23 吉井 勇|中堅企業における人的資本経営の実践
みなさんこんにちは、安田です。
トライアングル・トラスト専門家 社会保険労務士、ISO30414リードコンサルタント/アセッサー 吉井先生ブログ
第4回の掲載となります。よろしくお願いいたします。
テーマは「評価制度は「点数」を付けるためではない― 評価とは「役割という箱」を通じた成長の対話である ―」です。
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前回は、会社が目指す方向、部門のミッション、自分の役割、そして今期の期待をつなぎ、「自分は今期、何をどこまで実現するのか」を目標として明確にすることについて考えました。
では、一定期間取り組んだ後、その結果をどのように振り返り、次の成長につなげればよいのでしょうか。ここで必要になるのが「評価」です。
私は会社員時代、長く人事評価に携わりながら、評価することの難しさを感じ続けてきました。
第1話で触れた、私の人事観を変えるきっかけとなった部下もその一人です。限られた時間の中で工夫を重ね、周囲を巻き込みながら成果を生み出していました。しかし、当時の職能等級制度では、「その人がどのような能力を持っているか」を中心に評価していたため、実際に生み出した価値や組織への貢献を、私は十分に評価しきれなかったという思いが残っています。
評価面談を重ね、少しでも納得感を高めようとしました。それでも、「なぜこの評価なのか」を十分に説明できない。そんなときに出会ったのが、江夏幾多郎氏の『人事評価の「曖昧」と「納得」』でした。
人事評価には、完全には取り除けない「曖昧さ」があります。だからこそ、制度を精緻にするだけではなく、日常の仕事や上司と部下の関係性も含めて「納得」を考える必要がある。この考え方は、私自身の評価に対する見方を改めて考えるきっかけになりました。
現在、私はある中堅企業で「役割」を基軸とした人事制度の運用に関わっています。その中で感じているのが、上司と部下の間に「役割という箱」を置くという可能性です。
上司が部下そのものを見て、「あなたは3点です」と評価するだけでは、「評価する人」と「評価される人」という関係になりがちです。そうではなく、二人の間に「役割という箱」を置く。その箱の中には、期初に確認した「期待された役割」と「目標」があります。そして二人で同じ箱を見ながら、「何を期待されていたのか」「何を目標にしたのか」「どんな価値を生み出せたのか」「何ができるようになったのか」「次は何に挑戦するのか」を一緒に考える。評価の対象を「人そのもの」から、「期待された役割と、そこから生まれた価値」へ移すことで、評価を点数の説明から、次の成長に向けた対話へ近づけられるのではないかと考えています。
ここに、人的資本経営とのつながりがあります。人的資本経営で大切なのは、人を評価して終わることではありません。一人ひとりが持つ力を引き出し、それを新たな価値へ変え、その価値を本人と組織の次の成長へつなげていくことだと思います。つまり評価は一年の「終点」ではなく、役割 → 目標 → 行動 → 評価・対話 → 成長 → 次の役割・目標という価値の循環を次へつなぐ接点なのです。
そして、中堅企業には、この循環をつくりやすい面があります。経営と現場の距離が比較的近いからこそ、「会社は何を目指しているのか」「あなたには何を期待しているのか」「どんな価値が生まれたのか」を、上司と本人が直接対話できる余地があるからです。
ただし、ここで一つ重要なことがあります。人事がどれだけ良い制度をつくっても、役割を確認し、目標を一緒に考え、日々の行動を見ながら、評価を次の成長につなげるのは、社員のすぐそばにいる管理職です。自分が成果を出すことから、部下が成果を出せる状態をつくることへ。
人的資本経営を制度だけで終わらせないためには、管理職自身の役割転換が欠かせないのではないでしょうか。
次回、第5話は、「管理職が変わると組織は変わる」― プレイヤーからマネージャーへ ―をテーマに、人的資本経営における管理職の役割について考えてみたいと思います。
社会保険労務士、ISO30414リードコンサルタント/アセッサー
吉井 勇
▶吉井 勇 先生
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