2024.11.08 コンサルティング中堅企業五人衆課題解決高橋 康友
みなさんこんにちは、安田です。
トライアングル・トラストのスペシャル専門家チーム「五人衆」ブログを、3月2日から公開しています。
今回は、中小企業診断士 高橋康友先生の「中堅企業をめざす」ブログ第14回、
テーマは「事業継続のために一人当り粗利益額を高める」です。
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人の生産性に関する指標に「労働分配率」があります。
労働分配率とは、企業が生み出した付加価値の中で、役員や従業員の人件費がどの程度あるかを表す指標のことです。
厚生労働省が発表している産業別に見た労働分配率のデータは以下のとおりです。
(直近の2021年第4四半期のデータ)
全産業(除く金融保険業) 63%
製造業 55%
情報通信業 61%
建設業 66%
運輸業・郵便業 82%
卸売業・小売業 66%
サービス業 72%
医療・福祉業 83%
【算出方法】
労働分配率=人件費÷付加価値額
人件費=役員給与+役員賞与+従業員給与+従業員賞与+福利厚生費
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
労働分配率は産業によって異なり、単純に高ければよいとか、低ければよいというものではありません。
自社にとって適正な労働分配率を目安として設定し、その数値に対して高いか低いかをチェックして必要な手を打つことが求められます。
付加価値額は、粗利益額とみなすことができます。
シンプルに考えると、労働分配率は、企業が稼いだ粗利益額のうち、どれだけの割合を人件費としているかということです。
産業によって労働分配率は異なりますが、おおよそ粗利益の60%が人件費であるということになります。
賃上げをするためには原資が必要です。
その原資は粗利益額です。
よって粗利益額を高めることが必要であり、それも社員一人当たりの粗利益を高めなければなりません。
1人当たり粗利益額が1,500万円で、労働分配率が60%の場合は、社員の平均年収は900万円となります。
1人当たり粗利益額が1,000万円で、労働分配率が60%の場合は、社員の平均年収は600万円となります。
中小企業における優良企業の1人当たり粗利益額を見ると、1,600万円前後となっています。
言い換えると、1人当たり粗利益額をそれ以上に上げることは簡単ではないということになります。
例えば、小売業で粗利益率を50%まで高めるためにはどうすればよいでしょうか。
どこにでも売っているような商品では、価格勝負となってしまい、利益率も低くなります。
利益率を高めるためには、例えば、製造小売業となり、自社独自のコア技術と商品企画力を保有して磨き、適正な品質の商品を合理的に製造し、必要な数量を必要なタイミングで販売できるようにするなど、独自のビジネスモデルを構築しなければなりません。
成功事例として、株式会社神戸物産様が展開する「業務スーパー」を挙げることができます。
製造業の場合では、自社で値決めができるビジネスモデルの確立が望まれます。
そのためには、独自のコア技術を保有し、企画や設計から自社でできる体制をつくることが不可欠といえます。
そして、技術力や開発力だけでなく、営業力も必要です。
言い換えると、イノベーションとマーケティングの両輪をしっかりと回す経営をしていくことです。
社員数を増やさず、売上規模を追わずに、中小企業のままで高付加価値経営を実現して、一人当り粗利益額を大企業並みに近づけることもできます。
また、社員数を増やし、売上規模を高め、中堅企業となって高付加価値経営を実現して、一人当り粗利益額を大企業並みに近づけることもできます。
一人当り粗利益額を高めることを実現するための道筋に選択肢はあります。
しかし、一人当り粗利益額を高めなければ、事業の継続は困難なものとなります。
フレデリック・ハーズバーグ氏の『二要因理論』と考え方があります。
「動機づけ要因」と「衛生要因」の理論です。
「動機づけ要因」とは、満たされると満足度が上がる要因のことで、モチベーションを上げるための要因です。
例として、やりがいのある仕事、他人からの評価、仕事への責任、自己成長などがあります。
もう一方の「衛生要因」とは、不足すると満足度が下がる要因のことでで、モチベーションを下げないための要因です。
例として、給料(金銭的報酬)、ステータス、職の安定、作業条件などがあります。
賃上げは「衛生要因」となります。
賃上げを実施することは、モチベーションを上げるためでなく、モチベーションを下げないための要因と考え、経営者の方々が取り組まれています。
中小企業診断士
高橋 康友
▶高橋 康友 先生 プロフィール
https://triangle-trust.jp/aboutus/lecturer/#takahashi
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